3週間で30㎏の体重増加
ICUに移り、アレルギー科を中心に救急科や消化器内科、感染症内科など多くの医師が関わるようになりました。
抗生剤を再開して感染症は改善し、昇圧剤も必要なくなりました。
しかし、低アルブミンの状態は持続しており、連日のアルブミン投与が必要でした。
アルブミンとは血漿蛋白質で血管内に体液を保つ働きがあります。
アルブミンが低下すると、血管内の血液量が少なくなり、血管外に水が溜ります。
また、アルブミンのような血液製剤は保険診療内では使用できる量が決まっています。
一日2バイアル、3日間までという制限がありました。
献血でもたらされる恩恵、有限であることは仕方のないことですが、
無限にアルブミンがあったらいいのにと何度も思いました。
母の場合、小腸の炎症が広範であり、急速に進行していたため、点滴での補充が間に合わなかったのです。
胸水や腹水はもちろん、むくみは全身に広がっていきました。
最初に入院したと比べて、体重にして、約30㎏の増加を認めていました。
しかもこれは3週間くらいの出来事です。
こんな短期間でここまで体重が増えるほどのむくみ。
低アルブミンの恐ろしさ、自己炎症性疾患の恐ろしさを目の当たりにしました。
そして自分で動くことはできない、でも嘔吐や下痢は続いている地獄のような日々。
母の足やお腹には無数のひび割れ線。
「妊婦さんよりひどい肉割れだね」
病気によって、姿も何もかも変えられてしまっていました。
妊婦さん用の妊娠線予防や改善クリームとやらをAmazonで検索、
評価のよい商品を手に入れて、ケアを開始しました。
そしてこの状態について、医師からはSCLSかもしれないと説明されました。
”SCLS:Systemic capillary leak syndrome”
血圧低下、低アルブミン血症、血液濃縮を徴候とする症候群とのことです。
調べた文献によると、世界で200例、日本でも40例しか報告がないそう。
血管内皮の機能障害により血管透過性が亢進し、急激に血漿成分が血管外に漏出するために起こると考えらています。
アルブミンやグロブリン、ステロイドなどを総動員して治療を続けていきました。
ICUに来て、1週間ほどで、みるみるうちにむくみは改善。
50㎏台まで戻ってきていました。これも数日の経過で。
炎症に対してはステロイドの点滴も行っていましたが、全く効いていない状態。
全身状態が安定してきた段階で、小腸炎の検査を進めていくことになりました。
まずは上部消化管内視鏡検査(通称胃カメラ)、元々入院していた病院での検査結果より悪化していました。
先生が言うには、小腸の絨毛がほとんどなくツルンとしていると。
あれ?小腸って無数の襞があって、そこから吸収を行う消化器じゃなかったか?と。
内視鏡検査の画像も見せていただきましたが、まさしくツルンでした。
全身状態は安定し、一般病棟へ戻ることになったのですが、
その夜、39度の発熱と血圧低下を来し、再度ショック状態となりました。
一日も経たずにICUへ出戻る母。
「自分はなんでもなかったのに夜に血圧が40しかないとかでみんな大騒ぎしちゃって」と。
いや。血圧40台は大騒ぎになるし、なんなら40台で意識あったの?と笑ってしまいました。
そんなこんなで、またICUでの日々が始まったのでした。
ICUの看護師さんたちとも仲良くなってきていて、楽しい話をして盛り上がったそう。
入院する立場としては、どうしても関わらなくてはならない医療者。
日常を共にする人ですから、気が合ったり、楽しい時間を過ごせる人が一番ですよね。
母からみえる、病院の風景だったり、スタッフのあり方を聞くのは、とても興味深く、自分の看護観にも影響を与えました。
今回はここまでです。
では。