免疫抑制剤と生物学的製剤とやら。
世間では新型コロナウイルスが本格化していました。
今となっては1日に1万人近く感染者が出ても驚かなくなってしまいましたが、
上陸当初は数人出ただけでも大騒ぎになっていたなあとこの頃を思い出します。
4月に入って間もなくして、緊急事態宣言が発出され、
病院の面会も禁止になりました。
最初の緊急事態宣言のときは街から人がいなくなったのを覚えています。
多くの人が自粛を守ることが当り前の世界。
電車に乗って必要な物品補充のため病院に向かうとき、
そんな人気のない街に出ることに少し後ろめたさを感じている自分もいました。
必要性があって外に出ているけれど、傍からみたらその区別なんてできないですから、
”宣言下で出歩いている人”って見られていただろうなと思います。
転院の日なんか、さっそうと朝から私服でキャリーケース引いてましたしね(笑)
旅行に行くわけじゃないですよー!!って心の中で叫んでいました。
面会禁止時は、病院に着いたら病棟のナースステーションで荷物を渡し、
洗濯物を受け取ってそのまま帰宅といった流れでした。
約1時間かけて病院へ行き、5分で用事が済んでしまう、そんな日常でした。
また、母はこの頃とある感染症になってしまい、奥の個室管理になっていました。
もちろんコロナではありません。
日和見感染からの多剤耐性菌感染といったところです。
「日和見感染」とは、健康な方では問題とならないような病原体に感染することで発症する感染症のことをいいます。
人間には常在菌といって、誰しも皮膚などに存在している菌があるのですが、
健康な人であればなんともない病原菌です。
しかし、免疫力が低下している人や感染源となりうる挿入物が体内になる方にとっては、感染しうる菌となるのです。
そして多剤耐性菌とは多くの抗菌薬(抗生物質)を耐性を持つ菌のことです。
日和見感染の治療で使用した抗生剤に耐性を持つ菌が現れるということです。
抗菌薬の耐性を持つ菌に感染してしまうと、
その菌に対抗できる抗菌薬が限られてしまうので、治療が難航してしまいます。
母の場合、免疫不全の状態であることに加え、
長期のステロイド投与や中心静脈カテーテルなどの体外付属物もあったため、
健康な人の数倍も感染症にかかりやすい状態でした。
また、感染症にかかる頻度も多かったため抗生剤を長期に渡り使用しているという背景もありました。
多剤耐性菌は院内感染となると大変なので、多くは隔離管理となります。
隔離され、一番奥の部屋。
廊下でみかけたり、部屋を覗いて顔をみることもできませんでした。
そんな母ですが、転院を経て得られた新情報を踏まえて、
ある”治療”に踏み出すことになりました。
それが、「免疫抑制剤」と「生物学的製剤」とよばれるものです。
1つ目の免疫抑制剤とは免疫反応で中心的な役割を担う細胞の働きや増殖を抑えるものです。
母のような自己免疫性疾患では免疫系が過剰に働いており、
自分の体さえも攻撃してしまっている状態なのです。
簡単に言うと、その状態に対し過剰になった免疫を抑える薬を投与して、
免疫をニュートラルな状態にしていく治療となります。
免疫を抑えるということはもちろんデメリットもあるのですが、、、
(今回は割愛させていただきます。のちにどこかでご説明できたらと思います)
次に、生物学的製剤とはバイオテクノロジー(遺伝子組換え技術や細胞培養技術)を用いて造された薬剤で、特定の分子を標的とした治療に使われます。
この製剤は高分子の蛋白質でできており、内服薬では消化されてしまうため、
点滴あるいは皮下注射で投与します。(日本リウマチ学会参照)
体内で悪さしている分子に働きかけ、その機能を抑制する効果があります。
母の状態のおいては免疫不全状態であるものの、
ある部分では免疫系が亢進し、自己の免疫系を攻撃してしまっていたので、
それに対する免疫抑制剤として「プログラフ(タクロリムス)」、
生物学的製剤として「ヒュミラ」と呼ばれるものの投与が始まることになったのです。
これまで根本的な治療をできなかった母にとって大きな第一歩となりました。
今回はここまでといたします。
ここまで読んでいただいた方にとっても、やっと進展があったなと感じられる回だったのではないかと思います。
ここまで来るの長かったですよね。
でも、難病において捉え方によっては”早い”ともいうのかもしれませんね。
次回は新しい薬物治療についてやコロナ禍の面会事情などについて書いていこうと思っています。
お読みいただいた方、ありがとうございました。
では。