何かしたいと思えるように。溢れかえる本。
入院して半年以上、持続する症状に苦しみ、自分では体さえも動かせないような状態。
そんな状態では何かしたいと思う気持ちも起きないようで、
母はテレビや音楽鑑賞などの受動的に楽しめるもので時間を潰していました。
テレビはもっぱら大食い番組や料理番組を見ていましたね。
時々、調子が良いときには雑誌を眺めたりして過ごしていました。
雑誌選びのポイントは薄くて軽いもので文字が少なく、目で見てただ楽しめるもの。
長期入院で本をずっと持つ筋力さえも奪われていました。
”身体が辛くなく楽しめるもの”を意識していました。
お肉料理の料理本やラーメン店特集の雑誌、ハーブの雑誌や本、かわいい猫の本などは好評でした。
色々と面会に行くたびに差し入れしていたら、
テーブルの上は本で溢れかえって、転院のときには大変な思いをしました(笑)
そして世の中がコロナに侵食される頃、
母は症状(腹痛や下痢、吐き気、嘔吐、腹部膨満感等)は持続していましたが、
新しい薬物治療の効果があってか、症状が出る頻度が少なくなっていました。
症状が出ていると、動くとさらに悪化するということもあるし、
そもそも動くことができなかったりしたので、
基本的にはずっとベッドの上での生活をしてきた母。
辛い症状がないことで、体を起こす時間が増えるようになっていきました。
そんなある日、入院してからというもの受動的な楽しみばかりをしてきた母から、
「本が読みたい」との希望が聞かれました。
最初は本?
と思ったのですが、動けるようになったらなったで、暇をより感じるとのこと。
何かにずっと集中できるような暇つぶしを考えた結果、
読書を試すことにしたそうです。
自分で何かをしたいと思えるくらいになったことに安心しました。
加えてしたいことがあっても遠慮していたんだと思いますが、そんな母からの要望!
入院していると何もしていなくてもお金がかかる状態。
何か必要なものあったら言ってねと言うものの、
言う側からしたら言い出しづらかったと思います。
それを伝えてくれてとても嬉しかったです。
自分が思う楽しんでくれそうなものと相手が楽しめるものが完全に一致することって、
本人が言ってくれる以外ないなと思うので。
母の希望に添えることが嬉しかったのだと思います。
そんな母から希望が聞かれ、本を探す日々が始まりました。
まずは、一番最初の入院時に買った本が読めずじまいにいるとのことだったので、
それらの本たちを実家からお取り寄せし、物品補充時に一緒に持っていきました。
次の病院日まで悠長に過ごしていると、もう読み終えたとの連絡。
この頃の母は凄まじい速度で差し入れた本を読破していきました。
需要と供給が釣り合わない。
緊急事態宣言下では大型書店も時短営業となっており、
新しい本を入手するのに苦労しました。
お値段を考えるなら、メルカリや古本屋も脳裏をよぎったのですが、
免疫が低下している母に、感染源となりうるものを渡すのはリスクが高いと考え、
断念しました。
だからといって、店頭に並んでいる本が清潔かつ無菌なわけではないのですが。
緊急事態宣言下では営業している本屋も少ないし時短営業だし、多くの社会人がリモートワークになったり、学生も休校になったりと、いつにも増して混んでいましたよね。
閉店間際には書店内を1週する勢いのレジ列に驚いた覚えがあります。
あの時期はステイホーム、ステイホームと言われて、
何か家でできることを見出すことに注力していた気がします。
老若男女が書店に駆け込んで、普段読まないような小説や一念発起で何かの参考書を手に取ったりと、急に本と向き合う人が増えたように感じていました。
母への本選びの名目でしたが、自分もその中の1人でした(笑)
母に選ぶ本。
どういう本がいいという希望は特になかったので、
最初は話題の小説を差し入れることが多かったです。
最初に差し入れた本は宮部みゆきさんの「蒲生邸事件 上下巻」でした。
ミステリーや事事件解決系のお話が好きなこともあり、
宮部みゆきさんの作品なら、間違いないであろうとの予測、
そして上下巻があるこの本になったのでした。
私自身は母の読み終えた本は読むことはなかったので、
あらすじについてはご勘弁であります。
今回もとりとめのない話を最後まで読んで下さった方、そしてそうでない方も訪問いただきありがとうございました。
今後も病状や治療経過に加えて当時母が読んでいた本の紹介などもしていこうかと思います。
私が知らないだけかもしれないのですが、本の種類についての新たな発見などもあり、
お伝えできればと思っています。
では。